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限定実験

実験による実験。

調査12日目





・新たな同行者についての手記



「おいおい、情けねぇなぁ…。
 女相手に本気出した挙げ句、体よく逃げられるたァ」


ベルクレア騎士団の妨害を退けて先に進もうとした矢先、
不意に後ろから非難めいた声をかけられた。
しかし振り向くとそこに人の姿はない。

声は恐らく成人男性のもので、
しかもどこかで聞いたことがあるようだったが…。


「おい、どこ見てるんだよ小僧?
 下だよ………もっと下だ」


そう言われて視線を落とすと確かにいた。
この島では声をかけてくるものが人間とは限らないのだ。
見覚えがあると思ったら、先日襲いかかってきた山猫である。


「おや、付いてきていたのですか。
 しかも喋れたとは………」

「フン、やっぱり気付いてなかったか…情けねぇ。
 その様子じゃ俺が誰だかもわかってねぇんだろうな?」

「私にあなたのような知り合いはいないはずですが…。
 ネコの知り合いなんてそうそういませんからね」

「あのヤブ医者といいオマエといい、薄情なもんだな。
 姐さんなら覚えてくれてるだろうによォ…」

「姐さんと言うと………まさか、ガロですか?」


ガロ……彼とは以前の探索で行動を共にしていた。
私の主人が同じように襲いかかってきた彼を捕獲したのだ。
姐さんとは今は島を離れている仲間の合成獣のことで、
当時の彼と非常に親しくしていたのである。

ガロの彼女への好意は余程のものだった。
そしてついには文字通り全てを捧げるまでに至る。
彼は主人の手によってマナに還り、彼女に合成されることを望んだのだ。

その彼が、何故いま私の前に現れたのだろうか。


「……そもそも、あなたはオオカミだったのではないですか?」

「ああ、だがあの身体は姐さんに渡しちまったからな。
 そのまま俺の魂も一緒になれれば良かったんだが……このザマだ」

「なるほど、リコに合成されたのはマナだけだったのですね。
 精神体は合成されずに解放されたということですか」

「そういうこった………まぁ、ほとんど覚えてないんだがな。
 気付いたらこんな身体になってたのは十日ほど前のことだ」

「十日前と言うと、遺跡の閉鎖が解除された頃ですね。
 やはり閉鎖されていた間に何か大きな動きがあったのか…」


閉鎖中の具体的な情報が得られなかったのは残念だが、
彼のこの話しだけでも大きな進展である。

遺跡の閉鎖中には地形変動だけでなくマナ生物の再生も行われたこと、
また精神体が残っていればマナから新たに身体をつくりだせること、
このふたつがわかっただけでも十分今後の調査の役に立つ。
早速このことを踏まえて報告書を書かなければ………。


「おい………そんなことより姐さんはどこにいるんだ?」

「ああ、リコはドクターと一緒に帰りましたよ。
 今頃は普通の人間として街で暮らしているはずです」

「なにィ!…なんでそれを早く言わねぇんだよ!?
 そう言うことなら俺もあとを追って………」

「その姿でどうやって島を出るんですか…。
 それにドクターの街には喋るネコはいないのですよ?」

「ぐ………じゃあ、オマエが何とかしろ!」

「何とかと言ったって………」

「あのヤブ医者が姐さんにやったみたいに、できるだろ。
 とにかく俺にも人間の身体をつくってくれりゃいいんだ」

「しかし、私の合成技術ではまだ……………」

「それならできるようになるまで付いてくだけだ。
 ちょうどいい、ついでにこの辺を案内してやるよ」


以前からデリカシーのない粗雑な性格だと思っていたが、
やはり彼は相変わらずで強引に話しを決めてしまった。
これからもこの調子だと思うと少し気が滅入る。

ただ、確かにそろそろ合成獣技術にも挑戦したいとは思っていた。
その点では彼との利害関係は一致していると言えるか。
折角なら私の実験にも協力してもらうこととしよう。

………それに、多少の懐かしさもあることであるし。


「そうと決まったらボケっとしてないでさっさと行くぜ!」

「わかりましたよ………でも、その身体で大丈夫ですか?
 以前より随分マナも少なくなっているようですし」

「まぁこの身体も悪くねぇぜ…何たって姐さんと同じなんだからな」




  1. 2010/01/13(水) 20:00:00|
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